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コーディネーションの失敗
主要国の中央銀行(日銀を除く)が協調利下げを発表した直後に、世界の株式市場は「9月危機」以来最大の下げ幅を記録した。これはマーケットの「当局はわかってない」というメッセージだろう。私は、マーケットのほうが正しいと思う。現在の状況は、ある種の取り付け騒ぎである。ふつう証券市場で取り付けは起きないが、今回はそういうBlack Swanが発生した。その原因を、バーナンキも依拠しているDiamond-Dybvigの有名な論文で考えてみよう。彼らによれば、通常の状態と取り付けは図のような複数均衡になっている。

ここで横軸は預金者の行動(預金をどれだけ銀行に残すか)、縦軸はそれによって返ってくる預金額である。預金者の最適反応曲線は図のようになり、彼らの利得関数が同一だとすると、対称ナッシュ均衡は45度線との交点で、図のように複数ある。ふだんは預金を全額引き出すことはめったにないので、右上の「よい均衡」に全員がいるが、何かのきっかけで全員が預金を全額おろそうとすると、銀行は信用創造しているため全額払い戻すことはできないので、健全な銀行でも破綻する。これが左下の「悪い均衡」である。
すべての金融機関には悪い均衡に落ち込むリスクがあるが、ふつう証券市場で取り付けが起こらないのは、個々の証券とリスクが1対1に対応するstate-contingent contractになっているからだ。たとえばリーマン・ブラザーズが破産しても、それで損するのはリーマンの株主だけなのでリスクは遮断されており、すべての株式が売りに出されることはない。しかし預金はcontingent claimではなく銀行に対する無条件の債権なので、そのリスクは銀行しか知らない情報の非対称性がある。このため大恐慌のようにシステミック・リスクが大きくなると、安全な預金と危険な預金の区別がつかなくなって、盲目的に預金を引き出すパニックが生じる。
今回のように証券市場で取り付けが起こる原因は、本来contingent claimだったはずの派生証券があまりにも複雑になり、実質的に投資銀行に丸投げのブラックボックスになっていることだ。このため証券市場に預金と同じような情報の非対称性が発生し、パニックが起こる。そういう人が増えて、返ってくる預金の期待値が図の臨界点Xを下回ると、全員が預金を引き出すことが合理的になり、取り付けが安定したナッシュ均衡になってしまうのである。
Diamond-Dybvigモデルには、利子率は入っていない。取り付けは金利と無関係だからである。したがって、いま起きている世界的なパニックに利下げで対応するのはナンセンスだ。必要なのは、健全な証券と悪い証券を選別してリスクを分離するため、発行体の財務状況を徹底的に開示する透明性である。このためには、政府の資金供給を受ける条件として財務状況の開示を義務づけ、資本不足の銀行には強制的に資本注入する必要がある。市場にまかせていては、悪い均衡から脱却できない。
大恐慌と今回の事態の共通点は、本質的に金融危機であって実体経済の問題ではないということだ。実体経済が悪くなるのは、図のような金融市場のコーディネーションの失敗の結果であって原因ではない。これを主客転倒したことが、ケインズの最大の間違いだった。それから70年たっても、政治家の頭はちっとも進歩していないらしい。麻生首相の言い出した「追加景気対策」なるものは、日本政府は無知だというシグナルを出してマーケットの売り材料になるだろう。

すべての金融機関には悪い均衡に落ち込むリスクがあるが、ふつう証券市場で取り付けが起こらないのは、個々の証券とリスクが1対1に対応するstate-contingent contractになっているからだ。たとえばリーマン・ブラザーズが破産しても、それで損するのはリーマンの株主だけなのでリスクは遮断されており、すべての株式が売りに出されることはない。しかし預金はcontingent claimではなく銀行に対する無条件の債権なので、そのリスクは銀行しか知らない情報の非対称性がある。このため大恐慌のようにシステミック・リスクが大きくなると、安全な預金と危険な預金の区別がつかなくなって、盲目的に預金を引き出すパニックが生じる。
今回のように証券市場で取り付けが起こる原因は、本来contingent claimだったはずの派生証券があまりにも複雑になり、実質的に投資銀行に丸投げのブラックボックスになっていることだ。このため証券市場に預金と同じような情報の非対称性が発生し、パニックが起こる。そういう人が増えて、返ってくる預金の期待値が図の臨界点Xを下回ると、全員が預金を引き出すことが合理的になり、取り付けが安定したナッシュ均衡になってしまうのである。
Diamond-Dybvigモデルには、利子率は入っていない。取り付けは金利と無関係だからである。したがって、いま起きている世界的なパニックに利下げで対応するのはナンセンスだ。必要なのは、健全な証券と悪い証券を選別してリスクを分離するため、発行体の財務状況を徹底的に開示する透明性である。このためには、政府の資金供給を受ける条件として財務状況の開示を義務づけ、資本不足の銀行には強制的に資本注入する必要がある。市場にまかせていては、悪い均衡から脱却できない。
大恐慌と今回の事態の共通点は、本質的に金融危機であって実体経済の問題ではないということだ。実体経済が悪くなるのは、図のような金融市場のコーディネーションの失敗の結果であって原因ではない。これを主客転倒したことが、ケインズの最大の間違いだった。それから70年たっても、政治家の頭はちっとも進歩していないらしい。麻生首相の言い出した「追加景気対策」なるものは、日本政府は無知だというシグナルを出してマーケットの売り材料になるだろう。
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市場リスク 暴落は必然か
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素人の疑問ですが、リーマンを一時国有化して存続させ、時間をかけて債権債務を清算し、最終的に廃業させたほうがよかったのではないでしょうか。
それとも連邦破産法申請と結果は同じなのでしょうか。
また、ポールソンは投資銀行の出身で、彼に任せることは泥棒に追い銭のような気がします。彼よりも破たん処理の専門家に任せるべきだったのでは、とも思えます。
裁判所で清算するのも政府がtakeoverして清算するのも、実質的にはあまり変わりませんが、やはりbankruptcyという言葉のインパクトは強烈なので、形だけでも政府が入ったほうがよかったかもしれない。他方、bailoutという言葉のイメージの悪さも相当なものなので、このへんのワーディングを(メディアも含めて)考えた方がいいのではないでしょうか。
とありますが、
アメリカも欧州も時価会計ルールの適用方法を変更をするかもしれないとニュースが入ってきました。
日本の場合、政府の指導で隠してきたようですが、
欧米の金融機関はルールの変更を利用し隠してしまうかもしれません。
(しかも合法で!)
欧米もソフトランディングをさせようと頑張っているのはわかりますが、
もし、時価会計の放棄を許可してしまえば、
その結果クレジットクランチの拡大&長期化を招くという
日本の悪い所をマネして同じ道を辿るという最悪の道を行くことになります。
下記のニュースを見ると
>>米銀は一定の資産を時価会計ベースの帳簿から外すことができる
とあります。
今月の欧米の決算は何処も信用できないのではないでしょうか?
欧州銀の時価会計ルール適用方法変更へ=EU財務相
http://www.worldtimes.co.jp/news/bus/kiji/2008-10-08T093413Z_01_NOOTR_RTRMDNC_0_JAPAN-341545-1.html
例えば、リーマンの株式で被った損失を埋めるために、まだ儲かっている株式や商品を利食う→他の保有している株式や商品の価格が下落すると予想する→売りが売りを呼ぶ
といったことが、現在起こっています。
アメリカ政府には、経済面での戒厳令を施行してもらって、次期大統領には勝利宣言後からブッシュ大統領と協力して対処してもらいたいです。
ネタ元は、予想どおりクルーグマンの雑談。ちゃんと読め。彼は「有効需要曲線がこういう変な形をしてないかぎり、財政政策はきかない」といってるんだよ。限界消費性向がこういうふうに屈折する理論的・実証的根拠を示してほしいものですね。もちろんDiamond-Dybvigは、最適反応が屈折することを数学的に示しています。
HansenとCooper-Johnをごちゃごちゃにしているのも予想どおり。学説史では、有効需要関数と最適反応関数の区別もつかないのかね。しかも、また**の一つ覚えで日銀に「利下げしろ」。利下げがbank runに何の効果もないことは、市場の反応にあらわれている通り。理論的にも、そんな因果関係はない。
彼の信じているような「どマクロ経済学」は、今では大学院生もバカにしてるんだけど、学説史には80年代以降の理論はないのかな。
田原総一郎によると、「公的資金を注入したアメリカは、新自由主義に反する政策をとらざるをえなかった」そうです。すべてをマーケットに任せるのが、新自由主義だから、竹中改革の不良債権処理もフリードマン流の経済学に反したものだったとか・・・
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