チャベス大統領は潤沢な石油収入をテコに国内外で支持を広げてきた。
原油価格下落で財政は逼迫。政府支出削減か通貨切り下げは不可避。
経済混乱に乗じて、大統領が独裁に突き進む可能性もある。
ベネズエラのウゴ・チャベス大統領(54歳)は、近年の原油高で得た巨額の資金をばらまくことで味方を増やし、国内外で影響力を強めようとしてきた。国内の貧困層向けには診療所や学校を建設し、農業協同組合に出資した。キューバなどのカリブ海諸国には安価な石油を供給する一方、債務に苦しむ盟友アルゼンチンには融資をした。
3年前には「宿敵」米国にも進出、貧困地域に割安価格で暖房用灯油を提供した。ニューヨークのサウスブロンクス地区にベネズエラから初めて灯油が届いた日に現地スペイン語紙の一面を飾ったのは、サンタクロース姿で微笑むチャベス大統領の写真だった。
こうした大衆受けする政策で持論の「21世紀の社会主義」の足場を固める半面、経済効果をもたらすような従来型の投資は削ってしまった。このため首都カラカスの劣悪な幹線道路では渋滞が慢性化している。酷使された送電網は今年3回も全国規模の停電を起こした。民間企業は新たな課税や資産没収を恐れて投資を必要最小限に抑えている。同国の産油量は政府発表では日量300万バレルを超えるが、業界筋は1999年の水準から4分の1減少し、240万バレルに落ち込んだと見る。
ただ原油高が続く限り、こうした悪材料がチャベス大統領の“革命”を止めることはなかった。結局、原油価格の下落というベネズエラの泣きどころを突いたのはウォール街の崩壊と過去数十年で最悪の世界不況の兆しだった。
1バレル=95ドルが分岐点
注目されるのは、経済的苦境に大統領がどう対応するかだ。オバマ政権誕生を機に米国との緊張緩和の道を探るなど、改革の手を緩めて民間企業との関係を修復するのか。それとも強硬路線を貫き、経済不安に乗じて産業の国有化を進め、独裁体制を確立するのか。
ある嵐の午後、カラカス市内の高級ホテルのレストランに急ぎ足で入ってきたコンサルティング会社エコンレックスのイグナシオ・デ・レオン氏は、席に着くと白いテーブルクロスに指でアルファベットの「Y」を書いた。「我々は今、この字のような分かれ道にいる。チャベス大統領は穏健化か急進化かを選ばなければならない」。
次ページ以降は「NBonline会員」(無料)の方および「NBonlineプレミアム」(日経ビジネス読者限定サービス)の会員の方のみお読みいただけます。ご登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。



